AIプラットフォームとモデル比較
文書基準: 2026年9月 | この文書は変化の速い領域であり、四半期ごとのレビュー対象です。
従来型MLから生成AIまで
Section titled “従来型MLから生成AIまで”| 世代 | 主要技術 | 特徴 | クラウドサービス例 |
|---|---|---|---|
| 従来型ML | 回帰、分類、クラスタリング | 定型データベース、フィーチャーエンジニアリングが必要 | SageMaker, Azure ML, Vertex AI |
| ディープラーニング | CNN, RNN, Transformer | 非定型データ(画像、テキスト、音声)の処理。GPU必須 | GPUインスタンス、マネージド学習プラットフォーム |
| 生成AI | ファウンデーションモデル (LLM、マルチモーダル) | テキスト/画像/コード生成。API呼び出しで利用 | Bedrock, Microsoft Foundry, Gemini |
| エージェンティックAI | LLM + ツール呼び出し + 自律実行 | 目標を与えると自ら計画・実行・検証 | AgentCore, Foundry Agents, 詳細→ |
パラダイムシフト: 従来型MLは「データを集めてモデルを直接学習する」方式でした。2017年にGoogleが発表したTransformerアーキテクチャ(“Attention Is All You Need”)が転換点となりました。大規模テキストを並列で学習できるようになったことでGPT、BERTなどのファウンデーションモデルが誕生し、その後「すでに学習済みのモデルをAPIで呼び出す」生成AI時代が幕を開けました。エージェンティックAIでは、このモデルがツールを使って「自ら作業を完遂する」段階へと進化しています。
こんな状況で役立ちます
Section titled “こんな状況で役立ちます”- チャットボット/問い合わせ自動化 — 顧客問い合わせに24時間対応したいとき
- 文書要約/分類 — 大量の報告書、メール、契約書を素早く分析したいとき
- 翻訳/コンテンツ生成 — 多言語対応、マーケティングコピー生成、製品説明の自動化
- コード作成/レビュー — 開発生産性の向上、セキュリティ脆弱性の検出
- データ分析 — 自然言語の質問でデータインサイトを得る
オンプレミスでAI/MLを行うには、GPUサーバーの購入、フレームワークのインストール、学習インフラの構成を自ら行う必要があります。クラウドではGPUを時間単位でレンタルし、マネージドプラットフォームでモデルを学習・デプロイできます。
生成AIモデルの種類
Section titled “生成AIモデルの種類”| 種類 | 入力 → 出力 | 代表的サービス | ユースケース |
|---|---|---|---|
| テキスト (LLM) | テキスト → テキスト | GPT-6系, Claude Opus 5.5, Gemini 3.x系 | チャットボット、要約、コード生成 |
| 画像生成 | テキスト → 画像 | DALL-E, MAI-Image, Imagen, Titan Image | マーケティング、デザイン |
| 音声 (TTS/STT) | テキスト ↔ 音声 | Polly, Nova Sonic, MAI-Voice, Azure Speech, Cloud TTS | 議事録、ARS、アクセシビリティ、音声エージェント |
| 動画生成 | テキスト → 動画 | Nova Reel, Veo 3.1, Gemini Omni | 広告、ショート動画 |
| 動画理解 | 動画 → テキスト | Bedrock(TwelveLabs Pegasus)、Vertex AI(Gemini)、Azure AI Content Understanding、OCI Generative AI(Video Understanding) | 動画検索、シーン分析、字幕・要約 |
| マルチモーダル | テキスト+画像+音声 → テキスト | GPT-6系, Gemini 3.x系, Claude Opus 5.5 | 文書理解、画像分析 |
| エンベディング | テキスト/画像 → ベクトル | Titan Embeddings, Gemini Embedding, Cohere Embed | RAG、類似度検索 |
意思決定モデル(System One・非生成型)
Section titled “意思決定モデル(System One・非生成型)”上記の種類の多くはコンテンツを生成しますが、テキストを生成せず、定義済みの質問に構造化された判定を返すモデル群が2026年9月を起点に急速に形成されています。ベンダーはこれらを「意思決定モデル(decision model)」または「System One モデル」と呼びます。状態(state)とタイプの定まった質問を受け取り、選択肢・スコア・確率に較正された信頼度(calibration)を付けて返すため、ソフトウェアは自由テキストをパースせずに結果をそのまま分岐条件として使えます。柔軟性を手放す代わりに、低遅延・高効率・常に列挙された選択肢内での応答を得られますが、複雑な推論・生成(コーディング・要約・チャットボット)には不向きです。
| モデル | 提供元 | 形態 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Jev | TypeSafe AI | ホステッド | TypeSafeが「System One」と名付けて2026年9月中旬に公開したモデル。タイプ質問(Noul・Choice・Score)に確率・信頼度の判定を返す。コンテキスト32,000トークン、入力100万トークンあたり$0.042・出力課金なし、zero data retention。Cloudflare Workers AI経由で提供 |
| GLiNER2.5-Decide | Fastino Labs | オープンウェイト(Apache 2.0) | 2026年9月下旬公開。モデルカード基準で340Mパラメータ、GPUなしのCPUでも実行。DeBERTa-v3エンコーダベースで、ルーティング・感情・yes/noゲート・順位スコアなどの運用判定に特化。確率分布・信頼度・制約充足メタデータを返す。オープンソースGLiNER2系列の意思決定派生 |
| Strands Decider 2B | Strands Labs | オープンウェイト(Apache 2.0) | 2026年10月初旬公開。Qwen3.5-2Bデコーダから生成ヘッドを除去し、ポインタヘッド(約100万パラメータ)を載せて列挙された選択肢の一つを指す方式。ローカル(CPU・CUDA・MPS・MLX)実行、選択肢分布に基づく信頼度を提供。配布物はアダプタ・ヘッドで、Qwenベース重みは別途ダウンロードが必要。遅延は自社測定基準でタスク・ハードウェアにより大きく変動(例:RTX 3090で全体中央値約115ms)。ブログ · GitHub |
上記のモデルは似た入出力規約を共有しつつ、デプロイ形態(ホステッド ↔ オープンウェイト)と実行環境(マネージドAPI ↔ ローカルCPU/GPU)で分かれます。選択軸は「どこで動かすか(データ移転制約・エッジの有無)」と「要求精度・遅延」です。
生成AIサービス
Section titled “生成AIサービス”ファウンデーションモデルAPI
Section titled “ファウンデーションモデルAPI”自らモデルを学習させることなく、ベンダーがホスティングする大規模言語モデル(LLM)をAPIで呼び出します。各ベンダーは自社開発モデルとパートナーモデルを併せて提供しており、エコシステムが急速に拡大しています。
| モデル提供社 | 主要モデル | 1P (直接) | 3P (クラウド提供) |
|---|---|---|---|
| OpenAI | GPT-6系(Astraフラッグシップ / Sol中級 / Luna低コスト)、GPT-5.6、oシリーズ | api.openai.com | Azure Foundry, Bedrock |
| Anthropic | Claude Fable 5.1, Opus 5.5, Sonnet 5, Haiku 5.5 | api.anthropic.com | Bedrock, Vertex AI |
| Gemini 3.x世代 (Pro/Flash — 世代・バリアント・Preview/GAは公式文書で確認)、Gemini Omni | Gemini API | Vertex AI (ネイティブ) | |
| SpaceXAI (旧xAI) | Grok 4.7, Grok Imagine | x.ai/api | OCI, Vertex AI, Bedrock, Azure |
| Moonshot AI | Kimi K3 (オープンウェイト、マルチモーダル) | platform.moonshot.ai | Bedrock, OCI(インポート), セルフホスティング |
| Meta | Llama 4 (オープンウェイト) | llama.com | Bedrock, Vertex, Azure, OCI (ホスティング) |
| Amazon | Nova 1(Premier/Pro/Lite/Micro/Sonic等) + Nova 2(Lite GA、Pro Preview、Nova 2.5 Sonicは音声GA) | — (Bedrock専用) | Bedrock |
| Microsoft | MAI (Image/Voice/Transcribe) | — (Foundry専用) | Azure Foundry |
| Mistral | Large, Small, Codestral | api.mistral.ai | Bedrock, Azure, Vertex |
| Upstage | Solar Pro 4/3, Solar Mini 4, Solar Open 2 | console.upstage.ai | AWS/Azure Marketplace |
| LG AI Research | EXAONE 4.x | 直接契約 | Marketplace、セルフホスティング |
クラウドプラットフォーム別の特徴
Section titled “クラウドプラットフォーム別の特徴”上記のモデルをホスティングするクラウドプラットフォームは、それぞれ独自の付加価値を提供します。
| プラットフォーム | 強み |
|---|---|
| Amazon Bedrock | マルチモデル単一API、AgentCore、AWS IAM/VPC統合、EDP消化 |
| Microsoft Foundry | OpenAI主力チャネル、M365/GitHub統合、Foundry Local(閉域網)、PTU |
| Vertex AI / Gemini Platform | Geminiネイティブ、2Mトークン、Model Garden 200+モデル、ADK |
| OCI Enterprise AI | Oracle DB統合、専用GPUクラスター(RDMA)、イグレス10TB無料 |
AIエージェント / RAG
Section titled “AIエージェント / RAG”| ベンダー | エージェントプラットフォーム | RAG |
|---|---|---|
| AWS | Bedrock AgentCore | Bedrock Knowledge Bases — Managed KB(Smart Parsing, Agentic Retriever), Web Search |
| Azure | Microsoft Foundry Agents | Azure AI Search |
| Google Cloud | Gemini Enterprise Agent Platform | Vertex AI RAG Engine |
| OCI | OCI Enterprise AI Agents | OCI Search連携 |
コードアシスタント / AIエージェント
Section titled “コードアシスタント / AIエージェント”コーディングエージェント(Kiro, Claude Code, Codex, Copilotなど)とエージェントプラットフォーム(AgentCore, Foundry Agentsなど)はAIエージェントで扱います。
MLプラットフォーム
Section titled “MLプラットフォーム”自らモデルを学習・デプロイする必要がある場合に使用します。
| ベンダー | 製品 | 備考 |
|---|---|---|
| AWS | SageMaker AI | 学習、チューニング、デプロイ、MLOps統合プラットフォーム |
| Azure | Azure Machine Learning | ノートブック、AutoML、パイプライン、モデルレジストリ |
| Google Cloud | Vertex AI | 学習、デプロイ、パイプライン、Feature Store統合 |
| OCI | OCI Data Science | ノートブック、モデル学習/デプロイ、パイプライン |
GPU / AIアクセラレータ
Section titled “GPU / AIアクセラレータ”モデルの学習・推論に使うベンダー別GPUインスタンス(Blackwell B200/GB200、Hopper H100/H200、A100)、自社AIチップ(AWS Trainium/Inferentia、Azure Maia、Google TPU)、予約・スポットオプションは、マルチクラウドAI — GPU可用性に世代別スペック・性能・リージョン可用性とあわせて一元的に整理しています。
GPUインスタンスを選んだら、それらをどうクラスターにまとめて学習・推論するか(通信網・配置・分散学習・Kubernetes・容量・コスト)はGPUインフラの文書群で扱います。
Amazon Bedrock — 自社開発のAmazon Novaモデル(第1世代Premier/Pro/Lite/Micro/Sonic等とNova 2 Lite/Pro等 — 公式モデル一覧で世代・提供状況を確認)と、Anthropic Claude、OpenAI GPTシリーズなど多様な提供社のモデルに単一APIでアクセスできます。モデル選択の幅が広く、AIエージェント構築のためのAgentCoreなどの運用体系が強みです。
Microsoft Foundry — 旧Azure AI Foundryがブランドを統合した上位プラットフォームです。OpenAIモデル(GPT-6系、GPT-5.6系列)をエンタープライズ環境で利用できる主要な経路であり、Anthropic、Metaなど他社モデルも幅広く提供します。自社のMAIモデル群(Image-2.5, Voice-1, Transcribe-1)とFoundry Local(ローカル/閉域網実行)が追加されました。Microsoft 365、GitHub、Power Platformなど既存のMicrosoftエコシステムとの深い統合が最大の強みです。
Gemini Enterprise Agent Platform — 旧Vertex AIがエージェント中心に全面刷新されたプラットフォームです。Google自社のGemini 3.x世代シリーズ(Pro/Flash — 各バリエーションの世代・Preview/GA・上限は公式文書で確認)のネイティブなマルチモーダル能力とTPUインフラが強みです。長文コンテキスト・推論モード・Gemini Omni(マルチモーダル)や、Agent Studioを通じたローコードエージェント開発、Google Search/BigQueryとの連携が差別化ポイントです。
OCI Enterprise AI — 旧OCI Generative AIが拡張されたプラットフォームです。Cohere、Meta Llama、SpaceXAI Grok、Google GeminiなどのモデルをOCIインフラでホスティングし、専用AIクラスター(Dedicated AI Cluster)とRDMAベースのBare Metal GPUで高性能ワークロードを支援します。AI Guardrails(コンテンツモデレーション、PII検出、プロンプトインジェクション防御)とEnterprise AI Agents(GA)が追加されました。OpenAIとのパートナーシップにより、OpenAIモデル(API)およびCodexをOCI MarketplaceでOracle Universal Creditsとして利用でき、Oracle Database/アプリケーションとのネイティブ統合が強みです。
AI活用の拡張方向
Section titled “AI活用の拡張方向”Applied AI (業界別完成型サービス)
Section titled “Applied AI (業界別完成型サービス)”| 領域 | ベンダーサービス | トレンド (2025-2026) |
|---|---|---|
| コンタクトセンター | Amazon Connect, Azure Contact Center, Google CCAI | コパイロット → 自律エージェントへの転換 |
| 文書処理 | Textract, Document Intelligence, Document AI | LLM/マルチモーダル推論の結合 |
| BI | Amazon Quick, Copilot in Power BI, Gemini in Looker | エージェンティック分析、ダッシュボードエージェント |
| ヘルスケア | Amazon Connect Health, Azure Health Bot | HIPAAエージェント |
Physical AI (物理世界との接続)
Section titled “Physical AI (物理世界との接続)”センサー・ロボット・設備など物理世界とAIを接続するPhysical AI(エッジ推論、デジタルツイン・シミュレーション、ロボティクス基盤モデル)は、別文書Physical AIでベンダー中立の視点から詳しく扱います。
マルチクラウドモデルアクセスの変化 (2025-2026)
Section titled “マルチクラウドモデルアクセスの変化 (2025-2026)”2025~2026年にかけて、モデル提供社とクラウドベンダー間の関係が変化しています。最大の変化はOpenAI-Microsoft独占の終了であり、その他の提供社もチャネルを拡大しています。
| 時期 | イベント | 影響 |
|---|---|---|
| 2026.04 | OpenAI-Microsoft独占終了 | OpenAIモデルをAzure以外のプラットフォームでも提供可能に |
| 2026.04 | OpenAIモデル → Bedrock提供開始 | 独占終了直後にGPT-5.xがBedrockに登場 |
| 2025-2026 | SpaceXAI(旧xAI) Grokのマルチクラウド展開 | Azure AI Foundry(2025.09), Vertex AI, OCI, Bedrock(Grok 4.7、GovCloud 2026.10含む) |
| 2025-2026 | Anthropic Claudeのチャネル強化 | 既存のBedrock/Vertexに加え、OCIなどの追加チャネル |
| 2026.09 | フラッグシップ世代刷新の波 | OpenAI GPT-6系(Astra/Sol/Luna)、Anthropic Opus 5.5がAPI・Bedrock・Vertex・Foundryへ展開 |
運用上の示唆:
- 単一のクラウドベンダーに縛られず、複数の経路で同一モデルにアクセスできるようになりました
- モデル選択時に「どのモデルか」だけでなく「どのプラットフォームからアクセスするとコスト/SLA/リージョンが有利か」が意思決定基準となります
- マルチクラウドAIでベンダーの組み合わせ戦略を詳しく扱います
推論コスト最適化
Section titled “推論コスト最適化”生成AIの主なコストは推論(inference) で発生します。2025-2026年にベンダーが導入したコスト削減オプションです。
| 戦略 | 説明 | ベンダー対応 |
|---|---|---|
| Flex/バッチ推論 | レイテンシに敏感でないワークロードを低優先度で処理してコスト削減 | Bedrock Flex Inference, Azure Batch API, Vertex Batch Predictions |
| モデルルーティング | 単純なクエリは軽量モデル(Flash/Haiku/mini)、複雑なクエリのみ高性能モデルに分岐 | Bedrock IntelligentPromptRouter, 自社構築 |
| プロンプトキャッシング | 同一のシステムプロンプト/コンテキストをキャッシュして繰り返しトークンのコストを削減 | Anthropic Prompt Caching, OpenAI Cached Tokens, Gemini Context Caching |
| 長期コンテキスト vs RAG | モデルのコンテキストウィンドウ拡張(1~2M+トークン)によりRAGなしでも十分な場合が発生 | Gemini 3 Pro系, Claude Opus系 |
| GPU価格競争 | ハイパースケーラー間でのGPUインスタンス価格引き下げ傾向 | AWS, Azure, GCP競争的値下げ |
よくある間違い
Section titled “よくある間違い”- Fine-tuningから開始 — RAGで十分な問題をFine-tuningで解決しようとし、コストと時間を浪費。RAGをまず試すべき
- モデルバージョンを固定しない — ベンダーがモデルを更新すると既存プロンプトの挙動が変わり、プロダクション品質が突然低下する
- 単一モデルで全ワークロードを処理 — 単純な分類作業にも最大級のモデルを使用し、コストが不必要に増加。タスク別のモデル分離が必要
チェックリスト
Section titled “チェックリスト”- ワークロード特性(対話、要約、コード生成など)に合ったモデルを選択し、コスト/品質を比較したか
- モデルID/バージョンをコードに固定し、アップグレード時は評価を経て切り替えているか
- RAG → Fine-tuning → 直接学習の順で段階的にアプローチしているか