コンテンツにスキップ

統合可観測性アーキテクチャ

文書基準: 2026年8月

マルチクラウド環境では、各ベンダーが独自の可観測性ツールを提供します。

ベンダー ログ メトリクス トレース
AWS CloudWatch Logs CloudWatch Metrics X-Ray
Azure Azure Monitor Logs Azure Monitor Metrics Application Insights
Google Cloud Cloud Logging Cloud Monitoring Cloud Trace
OCI OCI Logging OCI Monitoring OCI APM

これらのツールを個別に運用すると:

  • サイロ化 — 1つのリクエストが複数のクラウドを経由すると、全体の流れを追跡しにくい
  • 重複コスト — 各プラットフォームのライセンス、ストレージ、教育コスト
  • 一貫性の欠如 — ダッシュボードとアラートが分散し、運用チームが混乱
  • ベンダーロックイン — 特定のツールに深く依存すると移行コストが増加

OpenTelemetryはCNCFプロジェクトで、ベンダー中立の可観測性標準を提供します。ログ/メトリクス/トレースを統一された方式で収集します。

graph LR
    A1[AWSワークロード] --> O[OpenTelemetry<br/>Collector]
    A2[Azureワークロード] --> O
    A3[Google Cloudワークロード] --> O
    A4[OCIワークロード] --> O
    O --> B[中央可観測性<br/>プラットフォーム]
  • Language SDK — 主要言語(Java、Python、Go、JavaScript、.NETなど)向けの計測ライブラリ
  • Collector — データを収集・加工・転送するエージェント
  • Semantic Conventions — 属性名/形式の標準(例: http.method, service.name

ベンダー公式サポート:

各クラウドワークロードのデータを1つの中央プラットフォームに送信します。

graph LR
    A[AWS] --> C[中央プラットフォーム]
    B[Azure] --> C
    G[Google Cloud] --> C
    O[OCI] --> C
  • メリット — 単一ダッシュボード、クロスクラウド相関分析
  • デメリット — 中央プラットフォームが単一障害点になる、データ移動コスト
  • 用途 — 一般的なマルチクラウド運用組織

各クラウドにデータを保持し、参照時点で複数のソースに同時クエリを実行します。

graph LR
    U[運用者·クエリ] --> F[クエリ連合層]
    F --> A[AWSログ]
    F --> B[Azureログ]
    F --> G[Google Cloudログ]
  • メリット — データ移動なし、イグレスコスト削減
  • デメリット — クエリの遅延、連合エンジンが必要
  • 用途 — データ主権要件が厳格な場合(Grafanaのようなツールが対応)

重要なメトリクスのみ中央集約し、詳細ログは元の場所に保持します。

サードパーティプラットフォーム比較

Section titled “サードパーティプラットフォーム比較”

ほとんどの組織は、複数のクラウドで可観測性を統合するためにサードパーティプラットフォームを使用します。

プラットフォーム 特徴 備考
Datadog 統合ダッシュボード、幅広い連携、APMに強み SaaS中心
New Relic フルスタックAPM、使用量ベースの価格 SaaS
Dynatrace AIベースの自動異常検知(Davis AI) エンタープライズ
Splunk ログ分析に強み、セキュリティ分析(SIEM)統合 エンタープライズ
Elastic Observability オープンソースベース、柔軟な展開 セルフホスティング可能
Grafana Cloud Prometheus/Loki/Tempoのマネージド版 OpenTelemetryフレンドリー

クラウドの移植性とコスト管理が重要であれば、オープンソーススタックを自前で構築できます。

領域 オープンソース
メトリクス Prometheus, Thanos, VictoriaMetrics
ログ Elasticsearch/OpenSearch, Loki
トレース Jaeger, Tempo
ダッシュボード Grafana
コレクター OpenTelemetry Collector, Fluent Bit

CNCFのCloud Native Landscape — Observabilityに全体のエコシステムがまとめられています。

可観測性のコストは通常、**収集量(GB)保存期間(日数)**に比例します。マルチクラウドではイグレスコストまで考慮する必要があります。

  • ログ収集量 — アプリケーションのログレベル(DEBUG vs ERROR)によって10倍の差
  • メトリクスカーディナリティ — タグの組み合わせが多いほど保存コストが増加(例: ユーザーID別メトリクス)
  • トレースサンプリング — 全トレースの1〜10%のみ保存しても分析可能
  • クロスクラウドイグレス — Fan-inパターンでは毎月数TBのデータが移動
  • サンプリング — トレースは代表性のみ維持
  • 圧縮/階層化 — 古いログは低コストのストレージへ移動
  • フィルタリング — 収集段階で不要なログを除去
  • 集約 — 生ログの代わりに集約済みメトリクスのみ中央へ送信
  • リージョン内処理 — 可能であればリージョン内で集約した後、メトリクスのみ送信

マルチクラウド統合モニタリング(Single Pane of Glass)

Section titled “マルチクラウド統合モニタリング(Single Pane of Glass)”

AWS CloudWatch、Azure Monitor、Google Cloud Monitoringを個別に確認するのは非効率です。マルチクラウド環境では、1か所ですべてのクラウドの状態を確認できる統合ダッシュボードが必要です。

アプローチ 説明 ツール
OpenTelemetry標準化 ベンダー中立の計測 → 単一バックエンドで収集 OTel Collector + Grafana/Datadog
サードパーティ統合プラットフォーム すべてのベンダーのメトリクス/ログを1つのSaaSに統合 Datadog, New Relic, Dynatrace, Splunk
オープンソーススタック 自前運用、ベンダーロックインなし Prometheus + Grafana + Loki + Tempo

統合モニタリング構成時の考慮事項:

  • 各ベンダーのネイティブメトリクスをOTelまたはPrometheus形式に変換
  • アラートを単一チャネル(PagerDuty、Opsgenie)にルーティング
  • ダッシュボードでベンダー別フィルタリングが可能なようにタグ/ラベルを標準化
  • コスト: サードパーティSaaSはデータ収集量ベースの課金のため、ログボリュームの管理が必要

マルチクラウド可観測性の導入時に確認すべき項目:

  • OpenTelemetry標準を使用してベンダー依存の計測を回避する
  • service.nameenvironmentなど共通タグ規約の定義
  • トレースサンプリングポリシーの設定(ヘッドサンプリング/テールサンプリング)
  • ログレベル別の収集/保存ポリシー策定(例: ERROR 90日、INFO 7日)
  • クラウドネイティブメトリクス(CPU、ネットワーク)はベンダーツールを維持
  • アプリケーションのメトリクス/トレースは中央プラットフォームに統合
  • SLO定義とエラーバジェットダッシュボードの構成(SLI/SLOとエラーバジェットを参照)
  • アラートルーティングの標準化(PagerDuty、Opsgenieなど単一統合)
  • コストモニタリング(可観測性プラットフォーム自体のコスト)
  • ダッシュボード/アラートの定期レビュー — 四半期ごとにダッシュボードが現在のアーキテクチャを反映しているか確認します。
  • アラートノイズの除去 — 無視されるアラートは削除するか閾値を調整します。アラート疲れは実際の障害を見逃す原因になります。
  • SLOベースのアラートチューニング — エラーバジェット消費速度ベースのアラートに切り替えるとノイズが減少します。
  • すべてのログをDEBUGレベルで中央プラットフォームに送信 — 収集コストが急増します。環境別のログレベルポリシー(本番はWARN以上)を策定してください。
  • メトリクスタグに高カーディナリティの値(ユーザーID、リクエストID)を使用 — 時系列の爆発により保存コストとクエリ性能が急激に悪化します。
  • トレースを100%サンプリングで運用 — ほとんどの正常なリクエストは分析価値が低いです。テールサンプリング(エラー/低速リクエストのみ保存)でコストを90%以上削減できます。